ヨーイングモーメントとブレーキペダルの位置・・・1

皆さんは、レーシングマシンのヨーイングモーメントについて考えたことはありますか? この「ヨーイングモーメント」あるいは「ヨーモーメント」についはググってみてください。 これは、ある意味では物理学上の用語です。 しかし、たかがレーシングカートに於いては非常に重要な要素かもしれません。 この「ヨーモーメント」は、レースカーがコーナリング中に上から見た車の回転軸を見た時 回転する際に必要な「回転力」を意味します。 つまり、この「ヨーモーメント」を小さくすることとは、車のシャシーセット的には重いものは できるだけシャシー回転センターに近づけることで、小さい力で車の向きが変わりやすいという ことを意味します。 フォーミュラカーが、わざわざ車の構成パーツで一番重いエンジンの位置を車のセンターに近づけるために、 ミッションとエンジンの位置を一般の車と逆にして、エンジンを車の回転センターに近い位置にしているのは そのためです。 そこでカートの「ヨーモーメント」について考えて見ましょう。 カートで一番重いパーツは何でしょうか? エンジンでしょうか・・・・・?ガソリンが入った燃料タンクでしょうか・・・・・? 実は一番重いパーツは人間の体なのです。 そこで人間の体の中で一番重い部分はどこだと思いますか? 実は足がある下半身が一番重いのです。 人間の上半身には肺があるため意外と軽く、人間のバーツとしては足がある下半身が一番重いパーツです。 それは子供であっても同じです。 つまり人間がカートに乗っているときに、一番重いパーツはシート中心からシャシーのペダルまでの 前側に延長して存在している。 これを体重の55%が下半身の重さとして考えて、おそらく約30キロの長いおもりが前側に存在している ことになる。 次にシャシーの構成について考えて見たい。 ドライバーの成長過程として、本格的乗り始めるのはカデットを卒業して最初に乗る大人用のカートシャシー であると思われる。 この際に注意しなければならないのはシートの位置とペダルの位置である。 体が小さいドライバーの為、苦肉の策としてシャシーのメインシートステーに延長パーツをつけて 本来考えられる理想的シート位置より前にして乗っている選手をよく見る。 又、何種類か市販されているペダルキットを使用してペダルセットしているシャシーをよく見る。 ペダルキットも足がペダルに届かなければどうしようもないので仕方がないと考えるだろう。 こんな際にしっかりした硬性がありなお且つドライバーの操作を正確にシャシーに伝えられる性能を持つ ペダルキットは無いといっても過言ではない。 特にドライバーのブレーキ操作が正確にシャシーのブレーキに伝わることが必要である。 子供用ペダルキットに求められる性能の90%は、その性能が優れてなければそのシャシーに 速さは期待できない。 その点を考慮し、私はジュラルミンの板を溶接し上記の動作をしっかり伝えられるペダルを 10年ほど前から作って使ってもらっている。 身長の大きくない高校生でも使えるくらいに調整幅を持たせたものであるが、 鈴鹿のX30でチャンピオンとシリーズ3位の結果が出た年にも使っていたものである。 なぜそのまま使っていたかというと、全体のシャシーセット的にはフロント側の重量配分を 精査するとフロントアクスルよりも前にかかる重量をなるべく減らしたいという目的である。 そうすることで、シャシーフロント側のヨーモーメントを減らすことができるということである。 さらに、速さに直結するドライバーとシャシーの両面で「ブレーキ操作の性能向上」に期待できる。 ・・・・・2に続く・・・・・